ウェスティンホテル大阪に不妊治療専門院を開いて9年が経ちました。
ここまで続けてくることができましたのは、スタッフをはじめ関係者の皆さん、ホテル関係者の皆さん、
そして何よりも、患者様として通っていただいた方々・・・多くの皆さんに支えられたおかげだと心より感謝いたしております。
開院前は、私たちがやろうとすることをホテルや周囲の関係者に伝え認めていただくのに大変な苦労をいたしました。思いに耳を傾けていただいても、本当に結果に結びつくようなことができるのかを納得していただくのにかなり骨を折ったように覚えています。最終的には、どんな資料をもって説明しても埓が開かないことですので、私たちを信じてもらうことしかありませんでした。そんな状況の中での開院、私たちは常に結果を出すことに拘らなければなりませんでした。
開院後は、周囲や私たち自身の当初の予想を遥かに上回るような治療実績となり、心配していただいていた方々にも安心してもらうとともに、私たち自身も自分たちの治療方法に自信を深めていくことができました。
今も様々な状況の方が、様々な事情を抱えて来院されています。
長年にわたり様々な不妊治療を経験されてきた方、授かることを半分諦めながらも最後の機会として来られた方、これから妊活を始められる方・・・
検査をしても妊娠しない原因がわからずに困惑されている方、妊娠適齢期と言われている時期を過ぎて焦り始めている方、ご本人の気が向かないまま家族の強い勧めで治療を始めている方・・・
患者様個々の状況とご事情に思いを寄せ、その方に合った治療方針を提案させていただきながら治療を進めていく。もちろんそこには、患者様にとっての喜びの結果に拘わり続けるという治療する側の姿勢がある。その思いを貫いてこそ、これまでの患者様から積ませていただいた様々な貴重な治療経験を、現在の患者様或いは将来の患者様へ反映させていただくことができると思っています。
様々なご事情の中において、治療代というものが不妊治療では大きな壁になることがあると思います。
当院の治療料金もまた高額だと思います。食事するときの飲食店や旅行で宿泊する宿などで感じることは時に、「ここまでしてもらってこの値段で良いの?」という驚き。そんな経験をする度に「私たちは患者様に、そのように思ってもらえているのか」を自問し続けてきました。
日常の生活の中で発生するストレスや不妊治療を続けることのストレスから患者様がひとたび解放されることができる治療環境として、ホテルという非日常的な環境の中でのプライベートな時間を提供することを私たちは大切にしています。それが特に不妊治療の場合の治療効果に強く影響すると考えているからです。
当院には鹿児島県から秋田県まで、また海外から通っていただく患者様もいらっしゃいます。患者さんが費やす時間やお金を決して無駄にできないという気持ちとともに、私たちが最も大切にしなければいけないことは、「患者様に提供するものや治療が、絶対に自分たちの自己満足にならないこと」です。当院に来院される患者様のモチベーションは様々ですが、「これだけしてもらってこの値段で良いの?」と納得していただけるようなことが全ての患者様にできるよう、常に患者様お一人おひとりの目線で臨まなければならないと考えています。
ネットやSNSなどの普及で、良いものも悪いものも、本物も偽物も、すぐに広がる世の中になっています。これからは更にそのスピードは加速していくようです。不妊治療をしている患者さんにとって時間は有限であるにも関わらず、その多様で時に無責任な情報に翻弄されて遠回りをされている方が多くおられることに強いもどかしさと憤りを感じます。ネットの世界では、お金を積めば信用を得ることができたり、技術によって優位な宣伝ができたり、なりすましや匿名によって無責任な情報をばら撒くことができます。
その技術やスピードに対応していくことを求められる時代の中でも私たちは、この6年の間に当院の患者様への治療から経験させていただいたこと、患者様が頑張られた姿、患者様の喜び・・・これらを偽りなくありのままに伝え、あとに続かれる患者様への正しい情報と”yell”になりますよう、いつまでも初心を忘れることなく精進していきたいと思っています。